2つのピアノ協奏曲

Created at 2025/12/18 0:00:00bynikorisoft

このエントリは、穏やかなぴょこりんクラスタ Advent Calendar 2025のために書かれたものです。

今回こそ短めのエントリです。

以前何回かクラシック音楽の好きな音楽について述べました (プロコフィエフの交響曲第5番とかサン=サーンスの交響曲第3番とか)。 そんな感じで、もとより知っていた曲でも何かのきっかけでやたらと繰り返し聞いてしまうことがあります。今回の記事では、今年なぜかハマって何回も繰り返し聞いてしまった曲について紹介していきたいと思います。今年のきっかけは録音ではなく、コンサートで聞いたものです。

今回紹介する曲は、ロシア(ソ連)の作曲家であるドミートリー・ショスタコーヴィチ(Dmitri Dmitriyevich Shotakovich)のピアノ協奏曲第1番 Op.35第2番 Op.102です。ショスタコーヴィチが作曲して残存しているピアノ協奏曲と題がつけられた作品はこの二つだけです。すごく有名というわけでもないですが、ショスタコーヴィチの代表的な作品といえるでしょう。

なお、この記事の譜例は下記のスコアからの引用です。

  • 全音楽譜出版社「ショスタコービッチ ピアノ協奏曲第1番」(ISBN 978-4-11-891845-7)

  • 全音楽譜出版社「ショスタコービッチ ピアノ協奏曲第2番」(ISBN 978-4-11-891846-4)

ピアノ協奏曲 第1番 Op.35 (1933)

最初は、プラウダ批判の少し前である1933年に作曲された第1番です。作曲者がつけた原題が何なのか言語の壁もあって正直よくわからないのですが(上記のWikipediaだと、Concerto in C minor for Piano, Trumpet, and String Orchestraとなっているので、どれがトランペットがどういう扱いか曖昧ですね)、いちおうピアノが独奏である協奏曲と仮定します。

参考のため、曲の動画はこちらです。

この曲が外形的に少し変わっているところは、4楽章編成ということもありますが、楽器編成です。

種類 編成

独奏楽器

ピアノ

金管

トランペット

弦楽器

第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス

ピアノは独奏楽器なのはいいとして、オーケストラは小規模な編成ではあるんですが、なぜか弦楽五部だけでなくトランペットだけがあります。なんかシュールで立ち位置がよくわからないです。実質、トランペットとピアノの二重協奏曲という解釈もあるようですが、ピアノのカデンツァや単独で演奏する箇所はあるのにトランペットソロはないので、やたら目立つオーケストラの一楽器という感じになっています。それこそ有名な曲では、バッハのブランデンブルク協奏曲第2番を思い起こさせるような構成ですね(あれでチェンバロが第5番のようにソロだったらまさにそれなのに)

曲の内容としても、いろんな既存の曲(ハイドンやベートーヴェン)の一部分を使ったりして、かなりユーモラスな曲となっています。

一番好きなのは、やはり第4楽章(Allegro con brio)のラストでしょう。最後の4小節を引用すると、以下のようになっています。

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第4楽章第492小節~第495小節

・・・実際の響きはなんか間が抜けたように感じるのですが、これがこの曲全体のラストというのがいい味を出していると思います。こうしてみると、ラストで目立ってるのはトランペットで、ピアノは弦楽と同じ和音を弾いているだけなので、やっぱりトランペットも主役なのかもと思えてしまう、そんな曲です。

ピアノ協奏曲 第2番 Op.102 (1957)

次に、ジダーノフ批判があった後、スターリンの死後である1957年に作曲された作品である第2番です。 この曲は編成こそ普通ですが、ほかの曲からの引用をごちゃごちゃと取り混ぜているところはあまり性格として変わりがありません。(曲の動画は、明らかに著作権がクリアっぽいものが見つからなかったので省略します)

楽器編成は、以下の通りです。

種類 編成

独奏楽器

ピアノ

木管

ピッコロ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2

金管

ホルン4

打楽器

ティンパニ、小太鼓

弦楽器

第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス

金管がホルンだけということで、これも古典派のころを感じさせるような小規模な編成です。その割にホルンが4本もあったり小太鼓もなぜかありますが。

この作品も第1楽章のラスト(下の譜例)が好きです。わかりやすく盛り上がって終わる感じがよいと思います。最後にだけピッコロが入って高音が強調されるところが地味に良いと思います。

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第1楽章第262小節~第265小節

また、第3楽章も全体的にリズミカルで、たとえば第2主題 (7/8拍子)も独特な感じがしてすごく良いです。下記の譜例は、かなりラストのほう(いちおうソナタ形式での再現部)での第2主題の最後の部分です。さらに、この直後のピアノの響きも好きです。

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第3楽章第290小節~第293小節

まとめ

というわけで、二つの曲について紹介してみました。どこがいいかを言語的に表現するのは難しいものです。