パンデミックと国際線 2022
Created at 2022/12/01 22:12:27and last updated at 2022/12/06 22:43:19bynikorisoft
このエントリは、平穏な生活を送りたいぴょこりんクラスタ Advent Calendar 2022のために書かれたものです。
ということで、結局今年も最初のエントリがアドベントカレンダー用になってしまいました。しょうがないですね。
さて、昨年(2021年)はまだ国際的な往来が(特に日本側の入国が)規制が強く残っていた時期であり、そのときの様子を状況整理編と実践編の2回に分けて書いてみました。 今年も、まだ完全に元に戻ったというわけではありませんが、2回ほど海外に行って帰国することがありましたので、昨年との違いを記録するという目的もあり、書いてみることにしました。
帰国日および出発地は、以下の2つです。
- 2022/09/03: アメリカ(カリフォルニア)
- 2022/11/12: オーストラリア(シドニー)
状況整理
日本の水際対策についてまとめてみましょう。
2021年の状況から、オミクロン株の流行、COVID-19ワクチンの3回目接種(ブースター接種)などなどの情勢の変化があり、水際対策にも隔離日数の短縮、必要書類の変更など大きな変化がありました。今回の帰国に直接関係するのは、以下となります。
日付 | イベント |
---|---|
2022/03/01 | ワクチン接種証明書および帰国後のPCR等による検査の結果に応じて、自宅等での待機を求めないものとする (水際対策強化に係る新たな措置 (27)) |
2022/06/01 | 各国を「赤」「黄」「青」の3区分に分け、自宅等での待機を求めない条件をそれぞれ設定。(水際対策強化に係る新たな措置 (28)) |
2022/09/07 | 3回目のワクチン接種を完了している場合、出国前の検査証明書の提出を撤廃 (水際対策強化に係る新たな措置 (31)) |
2022/10/11 | 原則として、すべての帰国・入国者に対して自宅等での待機などを撤廃 (水際対策強化に係る新たな措置 (34)) |
ということで、(27)および(28)によって、3回目のワクチン接種証明書があれば、帰国後の自宅待機や公共交通機関不使用といった行動制限が必要なくなりました。さらに、(31)によって、3回目のワクチン接種証明書があれば、帰国する飛行機に搭乗する際に陰性証明書を提示する必要(これは、昨年、(9)によって設けられた措置)がなくなりました。そして、(34)によって、事実上すべての国からの帰国・入国に際して行動制限が不要となりました。
なお、上記文章では回りくどく書かれていますが、上記の緩和措置は、「オミクロン株(B 1.1.529系統の変異株)が支配的となっている国・地域」に対して行われるものです。そしてその定義は、『「オミクロン株以外の変異株が支配的となっていることが確認されている国・地域」以外の国・地域』です。なんでこんな二重否定みたいな定義なんでしょうね。 これを書いている時点(2022年12月)では、「オミクロン株以外の変異株が支配的となっていることが確認されている国・地域」に指定されている国や地域は存在しないので、事実上はすべての国・地域が緩和の対象になっているということです。
出発地の入国制限
今回のメインテーマは帰国ですので、ちょっとオフトピックとなりますが、そもそも出発地に向かうにあたって制限があったのかについて述べます。
アメリカ合衆国
アメリカは、2022/06/12までは、ワクチン接種を終えていること(fully vaccinated)の証明と出発1日以内の陰性検査証明が必要でしたが、後者が06/12からはなくなりました。2022年12月時点でも、ワクチン接種証明書は引き続き求められているようです。 これらは搭乗前に航空会社が確かめるだけで、基本的には到着後のimmigrationなどで求められることはありませんでした。アメリカらしいですね。
オーストラリア
オーストラリアは、2022/07/06まではワクチン接種を2回行っていることの証明が必要でしたが、これがなくなりました。"Digital Passenger Declaration"も廃止されています。
ですので、COVID-19に関して入国に書類が求められることはありませんでした。
2022年9月: アメリカからの帰国
ということで、2022年1回目の帰国です。この時点では、検査証明書の提出を撤廃する通達はでていましたが、施行されるのが9/7だったので、まだ適用されませんでした。
従って、(28)にある条件が適用されます。昨年の記事に習って擬似コードみたいに書いてみると、
if ( 14日以内に「赤」区分の国・地域に滞在したことがある? ) {
入国時に検査();
if ( 3回目のワクチン接種証明書を保持? ) {
自宅等待機(3d);
if ( 自主検査を行い陰性? ) {
// 自宅等待機なし
} else {
自宅等待機(4d);
}
} else {
検疫所の指定する宿泊施設で待機(3d);
検査();
if ( 陰性? ) {
// 自宅等待機なし
} else {
自宅等待機(4d);
}
}
} else if ( 14日以内に「黄」区分の国・地域に滞在したことがある? ) {
if ( 3回目のワクチン接種証明書を保持? ) {
// 自宅等待機なし
} else {
入国時に検査();
自宅等待機(3d);
if ( 自主検査を行い陰性? ) {
// 自宅等待機なし
} else {
自宅等待機(4d);
}
}
} else { // 「青」区分の国・地域の滞在のみ
// 自宅等待機なし
}
ということになります。複雑ですね。
で、このときの帰国前14日間に滞在したところはアメリカ(ミズーリ州・カリフォルニア州)でしたので、「青」区分の地域のみでしたので、特に何の制約もないということになりました。
ただし、前述したとおり、(9)による帰国前の陰性検査証明は求められることになりますので、(悪名高き)検査証明書は用意する必要がありました。
アプリ
この時点では、MySOSというアプリを使って、入国時の手続きをオンラインで行うことでファストトラックを利用することができました。というか基本的には皆これを使っていたと思います。
ここで入力しなければならないのは、入国時の質問票の内容(これは昨年とほぼ同じ)、誓約書、ワクチン接種証明書、陰性検査証明書の登録です。ワクチン接種証明書および陰性検査証明書は、証明書の画像などを送信すると、システム上でたぶん人間がチェックして承認するというシステムでした。基本的に、陰性検査証明書以外は、入国の6時間前に済ませればいいのですが、逆にいつ入力してもいいので、一週間くらい前にはすべて入力してありました。
2022/08/30 (Tue)
(9)によって求められる検査証明は「出国前72時間以内の検査証明」でした。これの公式の解釈としては、「飛行機の出発予定時刻より72時間以内」ということで、後述するように09/02 12:15出発予定でしたので、8/30 12:15以降に検査したものであればよいことになります。
ということで、カリフォルニア州(サンフランシスコ)に移動したこの日に、そのまま空港(SFO)で検査を受けることにしました。
まあまあ高いのですが、ちゃんと日本政府指定のフォーマットで出してくれる実績のあるこちらで検査を受けました。ほとんどの国が検査要件をなくしつつあったため、非常にがらんとしており、念のため予約していったのですが、全く必要のない感じでした。
政府の指定された検体採取方法(nasal swab)で検体を採取された後は、結果が出るまで近くの空港のベンチで待つこととなりました。
一時間ほどといわれていましたが、40分ほどで結果を紙で受け取ることができました。
なお、クリニックのページからオンラインでも検査結果を見ることができましたが、この日本政府指定フォーマットは紙でしかもらえませんでした。(オンラインの情報だと検体採取方法の記述が見当たらなかったので、この紙をなくすと面倒なことになりそうでした)
何はともあれ、ねんがんの陰性証明書を手に入れたので、空港でスマートフォンのカメラで証明書の写真を撮って、MySOSでアップロードしました。
そうすると、1時間もしないうちに承認がされ、MySOSの画面が青色になりました。
これによって、飛行機が24時間以上遅れない限り、帰国便への搭乗ができることになりました! これで安心してカリフォルニアでの滞在を楽しむことができます。
という感じで72時間も余裕があると正直意味があるのかどうかよくわからない陰性検査証明書です。その点、6/12以前にアメリカへの入国で求められたのは1日以内の陰性検査証明書ですので、もう少し意味がある感じでしたね。
なお、SFOの国際線ターミナル(pre-security)ですが、昨年にはほとんど営業していなかったフードコートもこのようにちゃんと営業していました。
昨年の状態を再掲すると下記のような状態でした。写真を撮った向きは違いますが、まあ、明らかに全然違いますね。
2022/09/02 (Fri)
さて、実際に帰国便に乗る日です。昨年SFOから帰国した際にはJALでしたが、今回はANAです。
そして今回はホテルから空港までLyftを使ってしまいました。ちゃんと公共交通機関を使いたかったところなのですが、朝のラッシュ時刻に重なることから、大きな荷物を持った状態でCaltrainに乗るのは避けたかったということによります。
昨年は、ガラガラだったチェックインカウンターも、パンデミック前と同じような感じになっていました。
これでも乗客数は完全には戻っていない一方で、一回あたりの手続きが検疫手続きのせいで時間かかるようになったので列が伸びてしまっている感があります。
とはいえ、ちゃんと準備していけば、チェックインの手続きは、MySOSのQRコード画面を見せるという手順が増えるだけです。いちおう、スマートフォンをカウンターの人に渡すと、画面をスクロールさせて確認していました。
また、セキュリティを抜けた後の、あのガラガラだった搭乗口への通路もこの通り。(ただし去年のときはAゲート側で、今回はGゲート側)
ということで、フライトです。
項目 | 内容 |
---|---|
便名 | NH 7 |
出発地 | サンフランシスコ国際空港 (アメリカ) ゲートG10 |
到着地 | 成田国際空港 (日本) ゲート57A |
予定 | 12:15 ⭢ 15:25 +1d |
実績 | 12:21 ⭢ 14:46 +1d (10h27m) |
機種・機体番号 | B777-300ER (JA787A) |
昨年のようにビジネスクラスに1人だけみたいなこともなく、B77Wにかなり乗っているというパンデミック前に戻りつつある感じを受けました(満席ではなかったと思います)。
2022/09/03 (Sat)
ということで到着です。メモによると、14:46にゲートに到着して、14:51に降機できたようなので、本当に昨年の状態が嘘のようです。
また、昨年は、検査待ちのために椅子に座らされましたが、ゲートからターミナルの中央までの廊下では、立っている係員に1回、ブースの係員に1回、検疫所か入国審査前のブースで1回、MySOSの画面を見せることとなりました。最後の1回のときに、QRコードをスキャンされました。
それでも、入国審査(帰国手続き)を過ぎてバゲージクレームに到着したのが15:01だったようですし、ほとんど並んだり待ったりもしなかったので、かなりスムーズになっていました。
入国審査・税関手続きについては、パンデミック前と特に変わりない形となっていましたので、その前の検疫ゾーンがすべて、という感じでした。
昨年は、その後検疫所の指定する宿泊施設への移動などがあったので、入国審査・税関手続きそのものについては同じだったものの、税関を抜けた後にそのまま検疫所の係員に誘導されてバスを待つということになっていたので、やはり違いを感じられたものでした。
2022年11月: オーストラリアからの帰国
次は11月のオーストラリア旅行です。このときの日本入国においては、(34)が有効でしたので、オーストラリアからの帰国者・入国者に対する行動制限等はありません。
ですが、
- 訪問していた国
- (9)(31)による出国前検査証明もしくはワクチン接種証明書の提示
の確認が必要なため、検疫手続きは必要となります。11月からファストトラックを利用するのに使うのが、MySOS(アプリ)からVisit Japan Web(Webサービス・PWA)に変更となりました。
とはいえ、質問票の部分のWebサービス部分はMySOSのときと同一ですので、若干項目が変更されていること以外は、9月のときとほとんど同じでした。
2022/11/04 (Fri)
さて、今回入力が必要なのは、質問票(訪問国、帰国便、連絡先などの情報)とワクチン接種証明書ということなので、情報がそろっていれば、実は帰国する直前でなくとも入力ができます。
ということで、今回は5日間の短い旅行でしたので出発前に埋めることにしました。
その結果、そもそもの出国前に青表示にすることができました。これで安心してオーストラリアに行くことができます。
2022/11/12 (Sat)
シドニー空港のJALカウンターは、そんなに混雑していませんでした。2時間以上前にカウンターに行ったせいでしょうか。
このときは、9月と同じようにVisit Japan Webの青い画面を地上係員に見せました。ただ、スクロールなどはせず軽く見られただけだったと思います。
項目 | 内容 |
---|---|
便名 | JL 52 |
出発地 | シドニー国際空港 (オーストラリア) 第1ターミナル ゲート24 |
到着地 | 東京国際空港 (日本) 第3ターミナル ゲート112 |
予定 | 09:15 ⭢ 17:15 |
実績 | 09:17 ⭢ 16:54 (9h37m) |
機種・機体番号 | B787-9 (JA882J) |
で、問題は羽田空港です。相変わらず、検疫官の許可をもって降機開始という形式では変わらないのですが、このときはすぐに許可が下りて降りることができたので、パンデミック以前と特に変わるところがありませんでした。
さらに通路では、そこにいる係員に青い画面を見せると、赤い紙(帰国後の注意書き)を渡され、以降はそれを持ったまま検疫ブースを抜けるという形でした。それ以降は入国審査・バゲージクレーム・税関と特に検疫に関する手続きはありませんでした。ということで、ほぼ検疫に伴うオーバーヘッドはないといっても過言ではありませんでした。
ということで、羽田空港で青い画面を見せたのは1回、QRコードを読まれることはありませんでした。だいぶ簡略化されていましたね。
税関手続き電子化
さて、これも検疫の経緯とはあまり関係ない、オフトピックではありますが、空港の税関手続きが電子化 されていました。帰国時に紙に行っていた税関申告書の記入がWeb上でできるようになったのです(Visit Japan Webに統合されています)。
そして、想定されている利用手順(ユーザーシナリオ)は以下のようになります。
- (税関到着前までに) Webで税関申告書を記入する
- バゲージクレームで荷物を待つ間に、空港の税関にあるキオスク端末でQRコードを読み取り、パスポート情報と顔情報を登録する
- バゲージクレームから荷物を受け取る
- 税関の電子化ゲートを顔認証で通る
というものです。
ただし、想定するようにスムーズにいくものではなく、羽田空港での(自分が11月に帰国した時点での)運用時の問題は、
- キオスク端末がバゲージクレームのあちこちに分散配置されているのにもかかわらず、カバーが掛けられて使用不可能になっていたこと (税関の出口付近に数台あるものだけが使えた)
- 電子申告ゲートは1つだけで、紙申告によるゲートが大多数であった
というものでした。
キオスク端末の数が少ないために結構な行列となっている一方で、紙による従来のゲートの数はそんなに変わっていなかったので、紙の申告書を書いて並ぶのとあまり変わらない、下手すると早いかもしれないという問題が発生していました。
さらに、もう一種類のゲートとして、税関職員のいるブースの中に電子化で入力したQRコードを読み取る装置のついているものがありました。 ここはキオスク端末を利用することなく、紙の申告書をQRコードで代用する形で税関を通ることができるものでした。 ただ、これも2つしかなかったので、結局並ぶことには変わりありませんでした(紙の申告書くらいのところと同じくらいの列の長さ)。
自分は、荷物を待つ間にキオスク端末に行くというのを思いつかず、どうせ並ぶならということで、この中途半端に電子化された方法で通ってしまいましたが、電子化の恩恵があったのか微妙な気分でした。
なんでせっかく分散配置しているキオスク端末を稼働させてなかったんでしょうね? 質問に対応できる税関職員を配置できないからとかそういう理由だったんでしょうか。
まあ、オーストラリアの入国審査は電子化されていたのに税関は紙で結構並ぶ羽目になっていたので、日本の税関のUXが悪いということではなかったのですが、今後の運用が改善されることを祈るのみです。まあ普通に十分な数のキオスク端末を稼働させるだけでいいと思うんですけどね。
まとめ
是非はともかくとして、だんだん国際的な人の往来がパンデミック前に戻りつつあるということで、水際対策は数ヶ月とか下手すると数週間単位で制度が変わる状況が続きました。ここでは、2022年9月、11月という2回の帰国での経緯をまとめることで、わずか2ヶ月といえどもその違いを多少示すことができたのではないでしょうか。
まあ、昨年の帰国も含めて、日本の空港到着後の検疫手続きの写真などがあればよかったのですが、残念ながら降機してからの検疫手続き・入国審査・税関は撮影禁止でしたので、文章で書くしかなかったところが、この記事の(トピックの)残念なところでしょうか。