Casual Derailment

このエントリは、カレーのち ぴょこりんクラスタ Advent Calendar 2018 のために書かれたものです。

初心者です。よろしくお願いいたします。という言い方もだいぶ大時代なものになってきている感がありますが、まあその。

Introduction

さて、今回は、何の脈絡もなく、2018年8月にふとアメリカにおいて脱線事故がどれだけ起きているか、ニュース記事を検索して調べてみた結果をまとめてみたいと思います。

そもそも、その動機とするところは、 2017年12月のワシントン州のAmtrakの脱線事故 に続き、2018年2月のサウスカロライナ州のAmtrakの衝突事故 など、控えめに申しまして安全性に疑問を抱く、正直に申し上げて野蛮な鉄道事故があったことです。

そこで、何気なく、derailでGoogleのニュースを検索してみると、あれ?なんか毎日くらいの勢いで脱線ニュースあるんじゃない?ということに気づきました。

いや、いくらなんでもそんなことはないだろうということで、定点観測として、8月の間、毎日検索をしてみたというのが経緯です。といっても、単にGoogleのニュース検索を適当に眺めただけですので、抜け落ちがあると思いますし、そもそも報道されていない、あるいは、ニュース検索で引っかからない場合も多々ありますので、全然網羅的な結果ではないことを申し添えておきます。

Derailment in Aug 2018 in the US

で、こちらが結果です。

日付 鉄道事業者 場所 ニュースソース
Aug 1 MTA (旅客) New York, NY NY1
Aug 1 LNW (貨物) Columbia County, AR KARK
Aug 2 Amtrak (旅客) DC, Union Station付近 Washington's Top News
Aug 2? BNSF (貨物) Cut Bank, MT Great Falls Tribune
Aug 4 Pan AM (貨物) Wendell, MA Athol Daily News
Aug 5 Norfolk Southern (貨物) Pittsburgh, PA CBS Pittsburgh
Aug 5 Canadian-Pacific (貨物) Winona County, MN News 8000
Aug 8 Union Pacific (貨物) St. Paul, MN FOX9
Aug 8 BNSF (貨物) Great Falls, MT US News
Aug 9 NYSW (貨物) Deposit, NY Press Connects
Aug 14 Tri-Rail (旅客) Deerfield Beach, FL WPTV
Aug 15 Norfolk Southern (貨物) Powell, TN WBIR
Aug 16? Norfolk Southern (貨物) Greensboro, NC FOX8
Aug 20 Union Pacific (貨物) Wauwatosa, WI WISN
Aug 21 BNSF (貨物) San Bernadino, CA Los Angeles Times
Aug 23 Canadian Pacific (貨物) Marquette, IA News 8000
Aug 25 CSX (貨物) Greenwood County, SC The State

ということで、一ヶ月で17件、平均して2日に1回程度で全米のどこかで脱線事故が起きていることがわかりました。すごいですね。 脱線といってもいろんな程度がありますが、全体的に横転を伴うような激しいものが多いです。 その一方で、見かけの派手さはありますが、貨物列車が脱線したものが多く人的被害のないものばかりです。

とはいえ、旅客列車が絡むものも2件も起きています。また、8/5のPittsburghの件は、脱線したのは貨物列車ですが、ライトレール(The T)のホームに脱線した列車が突っ込んでおり、一歩間違うと人命に関わるものでした。

日本における脱線事故

さて、日本ではどんなものなのでしょうか。

旅客列車の絡む脱線事故は、2005年の福知山線脱線事故2005年の羽越本線脱線事故 のような大事故がまず思い浮かぶところです。 そこまで大規模ではない脱線事故として、個人的に思い出深い(?)のは、2011年3月10日の成田線滑河駅構内脱線事故です。成田線という個人的になじみ深い路線であったことと、東日本大震災の前日に起きたという点で印象に残っております。

とはいえ、脱線事故全体でみるとどのくらいあるのでしょうか。

基本的には、脱線事故が起きれば、上のリンクですでに引用しましたが、国土交通省の運輸安全委員会 (JTSB)の調査対象となるはずです。 事故の件数は、統計情報のページにあります。

年によってばらつきがありますが、直近2年を見ると、2017年は9件、2018年は今のところ2件のようです。 2017年の例を見てみますと、踏切障害によるものが2件(これは置いておきます)、旅客が6件、貨物が1件です。他方、2018年は、全件貨物です。

どう考えても2日に1回のペースなどではないことがよくわかりますが、それでも昨年で言えば、旅客列車で2ヶ月に1回のペースで起きているのは、意外に多いような印象です。 とはいえ、列車が盛大に脱線・横転するような派手なものは、さすがにないようです。

事故調査報告書の内容をさらに読み進めていくと、原因を知ることができますが、そんなことをしていると日が暮れるので、今回は深入りせず件数程度で我慢しておきます。

アメリカにおける脱線事故

さて、アメリカにも当然というかこちらが本家だと思いますが、National Transportation Safety Board (NTSB) があります。

ここで事故の報告書や中間報告書を検索することができますが、上記で挙げた8月のいずれもその対象にはなっていないようです。 ということで、たいした事故と見なされていないような気がいたします。

また、適当に調べた限りでは、日本の運輸安全委員会のような統計情報も見つけることができませんでした。そもそも、あまり鉄道に力が入っていない感があります。

報道も続報がほとんどなく、原因について言及されていないケースが多いです。それも人的被害が出ていないということが大きいでしょう。

上記の中で比較的重大だと思われるのは、Pittsburghの件ですが、これはさすがに複数のニュースサイトで取り上げられており、 原因も土砂崩れと思われると上記記事にもありました。

路線長と取扱量

さて、結局、統計情報はよくわかりませんが、上で調べた結果のこの件数はそもそも多いのでしょうか。 信号システムの整備の遅れなど、アメリカは、鉄道の後進的なイメージがありますが、 そもそも忘れてはいけないのは、アメリカは世界一位の鉄道大国でもあるということです。

ということで、いくつか統計情報を。

  • CIAによれば、アメリカの鉄道路線長は、293,564 km (2014年)だそうです。マイル表記でないことに驚きますが、それはともかく当然世界一位です。
  • Bureau of Transportation Statisticsによると、輸送量(トン・マイル)基準では、2016年には、アメリカの貨物輸送の31.7%を鉄道が担っており、1,585,440 Mトン・マイル (2,551,512 Mトンkm)です。
  • 同じくBureau of Transportation Statisticsによると、旅客輸送量は、39,609 M人マイル (63,744 M人km) (2016年)です。

他方、上で比較に出した日本は、

  • 鉄道路線長: 27,311 km (2014) (CIA)
  • 鉄道旅客輸送量: 437,362 M人km (2017)(国土交通省)
  • 鉄道貨物輸送量: 19,966 Mトンkm (2017)(国土交通省)

ということで、アメリカは日本と比較して、路線長で10倍以上ですし、貨物輸送量では100倍以上です。とんでもないですね。 他方、想像されるように、旅客輸送量では、1/7以下となっています。

まあなので10倍から100倍くらい事故があっても、不思議ではないですねー(投げやり)

まとめ

こんなことを書いていたら、10/21の台湾に続いて、12/8に韓国でも脱線事故があったようです。

アメリカでも、さらに、幸いにして人的被害がないようですが、11/30にカリフォルニアのベイエリアのVTAや、12/8にボストンのMBTAで 脱線事故が起きたそうです。

鉄道に乗ることを楽しみとしている一人としましては、世界各国の鉄道システムの安全性が高まることを望んでやみません。